タイ旅行が決定した時、絶対に行こうと企んでいたスポットがいくつかあるのだが、その一つがゴーゴーバーだった。
ゴーゴーバーというのはタイで一番メジャーな風俗店の一種である。お立ち台でくねくね踊る半裸の女性たちを眺めたり、外に連れ出してご飯を食べたりその他いろいろなことが出来るという男たちにとってはパラダイスのような場所なのだ。
どこへでも大体一人で行ってしまう自分ではあるが、さすがに異国の、しかも男性用風俗に一人で乗り込むのは恐ろしかったので現地に住んでいる日本人の女の子について来てもらうことにした。
この、コムデギャルソンのTシャツを着たかわいい女の子は「みやけよう」さんという名前で、大学を休学して海外を渡り歩いているらしい。2か月前までインドで半年インターンしていて、今はタイにある「スタートアップハウス」というシェアハウスに住んでいる。そこで新規事業の立ち上げのお手伝いとかをやっているという、とにかく色々と意識が高すぎる女子なのである。
意識の高い人をちょくちょく馬鹿にしてしまう私だが、ようさんとは「いやらしいお店に行ってみたい」というところでがっちりと意気投合したのでバンコクの繁華街「アソーク」で待ち合わせした。
「アソーク」駅から数分歩いたところに「ソイ・カウボーイ」がある。「ソイ」は「通り」という意味なので「ソイ・カウボーイ」は「カウボーイ通り」。アメリカ人がこの情欲と金にまみれた通りを作ったのだと言う。
私とようさんは2人でネオンが煌めくこの通りをひとまず1往復してみた。どの店の女たちも露出の激しい服を着て観光客を引き込もうと躍起になっている。
私たちは結局「バカラ」というお店に入ることにした。「バカラ」はソイ・カウボーイの中で一番女の子の数が多いお店らしい。
おそるおそる店の中に入ろうとすると受付の女性が何か喚いている。
よくよく聞いてみると「女だけの入店は出来ない」とのことだった。
みやけようさんが英語で必死に「店の中で男の子と待ち合わせしてる」と嘘をついてくれたのだが、それでもスタッフは「店の外で合流してから中に入れ」と譲らない。
私たちは一旦店から離れて「どうする?諦める?」などと話し合った。
しかしせっかくここまで来ているので、「与しやすそうな男性(出来たら日本人)」に声をかけて一緒に店に入ろうということになった。
団体の韓国人や、中国人などは見かけるが中々日本人がやって来ない。しびれを切らした私は一人で歩いていた恰幅のよい白人男性に声をかけた。
「どちらの店に行かれるんですか?」
「特に決めていないんだけど、どうしてだい?」
「わたしたち、バカラに入りたいんですけど、女だけだと入れないって言われちゃったんです。だから一緒に入ってくれませんか?」
白人の男性は「俺はとりあえずブラブラしたいから」みたいなふわふわした理由で私たちの誘いを断った。私たちはまた途方に暮れた。
時間が早すぎるのか(しかし21時は回っていた)人通りが少ない。日本人どころか男性の数がそもそも少なすぎる。
半ば諦めていたその時、スーツに黒い鞄、メガネをかけた真面目そうなアジア人が目に飛び込んできた。2人組のアジア人の会話に耳をすますと、「~ですよ」という音が聞こえた。日本人だ。
私はようさんと目配せをした。ここでキメるしかない。
暇だから30代男性を逆ナンしてみた(前編) - 暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ
わたしは一応「逆ナン」が得意な人としてぐるなびの「みんなのごはん」というサイトで連載まで持ってしまっているので、ここで逆ナン成功しないとかなりマズイ気がした。
上司っぽい40代と、20代の男性2人組の方へ近づいて行く。
暇「あの~、もしかして『バカラ』へ行かれますか?」
上司「え、行かないけど。どうして?」
『行かないのかよ・・・』と落胆しながらも、日本人と日本語で話せることにほのかに安心を感じてまくしたてた。
「私たち、どうしてもバカラに入りたいんですけど女子だけだと入っちゃダメだって言われたんですよ・・・」
「ふむふむ、なるほどね・・・」
「一緒に入ってあげてもいいよ」
「えっ!」
「あ、ありがとうございます・・・!」
さまよえる女子二人組は、日本人サラリーマンの力によってついにゴーゴーバー潜入に成功するのである・・・
「ふふふふふふ・・・」
つづき↓