SEX AND THE BU-SHOW セックス・アンド・ザ・武将
★主な登場人物★
信子(織田信長)
「ヤらぬなら 殺してしまえ 草食系」がモットーの超肉食系女子。派手好きでやりたい放題だが、リーダーとして皆を引っ張ってくれる頼もしい存在。アネゴ肌で、秀美のことを妹のように可愛がっている。
秀美(豊臣秀吉)
「イかぬなら イかせてみせよう 遅漏衆」がモットーのテクニシャン。一見大人しそうに見えるが、月一回自らが開催する「刀狩」と称した大乱交パーティでは男(刀)を食いまくっているともっぱらの噂。表と裏の顔を持つ、ミステリアスビューティとしてセレブ界隈では注目株。
康子(徳川家康)
「勃たぬなら 勃つまで待とう 60代」がモットーのジジイ専門ヤリマン。お嬢様育ちで性格はのんびり、温厚。父を早くに亡くしてしまったことが原因なのかファーザー・コンプレックスの気があり、恋愛対象は常にかなりの年上。これまでも数々のジジイたちを翻弄してきた。不倫、援交はお手の物。
明美(明智光秀)
ときに狡猾、ときに非情な小悪魔系女子。恋愛至上主義で、愛のためなら自分の彼の浮気相手を殺してしまうほどの情熱家。一部の男性たちからアイドル的な人気があり、唯一無二の親友、信子と「OSAKA二大ヤリマン」として、関西では負け知らずだった。
ここはとある都会のBAR。4人のかしましい女たちが今夜もガールズ・トークに花を咲かせている・・・・
「それマジで言ってんの?」
康子は大きな二重の目をさらに大きくして驚いた。
「ほんとほんと。あたし30歳になるまでに10000人斬り目指してるからさあ」
信子はいつも誇らしげに自分の性談を皆に話して聞かせる。どうやら信子はいま六本木で一番人気のクラブDJ、Ho-ichiさんと懇ろの仲らしい。Ho-ichiさんは確か琵琶法師とかいう大昔の音楽家の末裔だ。セレブ、有名人好きの信子にとっては格好のカモだったってわけね。と秀美は呆れ顔で信子を見つめる。
「ダンスフロアを乱交会場にしてやったの。皆ケシのエキスでハイになってたし。12時間くらいヤリまくりだったわ」
「すごいなあ・・・私の恋人たちはみんなおじいちゃんだから、もっても5分だし、一回イッちゃうとその日はもう出来ないよ」
康子は尊敬と軽蔑の入り混じった目で信子を見上げた。そんな康子を信子は笑いとばす。
「ジジイなんて何がいいんだか。経済力?康子は元々お嬢なんだからお金なんていらないでしょ」
「ジジイはジジイなりの良さがあるの!」
康子はムキになって叫び、コップに残っていたブラッディ・マリーを一気に飲み干す。
「秀美、あんたも年上と付き合ってなかったっけ?」
今まで信子と康子のやり取りを聞くともなしに聞いていた明美がやっと顔を上げて秀美に話しかけた。
「ああ、利希宇のこと?」
信子の自慢話に鬱陶しさを感じていた秀美の顔は、恋人のことを思い出して途端に華やいだ。
「そうそう、利希宇さん。あの人のカフェ、今すごい流行ってるんでしょ?」
「利希宇のいれるコーヒーは最高だからね」
ふふふ、と照れるように笑う秀美を、明美は素直に可愛いと思った。
「利希宇・・・確かにあの人はシブイよね。違いの分かる男ってカンジ?」
信子もさすがに利希宇に対する批判は出来ないようだ。
「なんか先祖代々茶道の家元なんでしょ?かっこいいじゃん、そういうの。ま、Ho-ichiさんだってセレブだけどね♪」
じゃ、あたしこれからデートだから、と信子は颯爽と都会の雑踏の中に消えていく。
「はァ、本当に信子はすごいわね・・・」
康子は恋人(70歳)に買ってもらった600万円もする腕時計をちらりと確認した。
「ね、ね、ちょっと」
明美が何か真剣な面持ちで秀美と康子に顔を近づけた。迫力に負け、二人も訝しがりながら耳を貸す。
「信子のことなんだけど」
秀美は何かイヤな予感がした。明美から聞く信子の話で愉快な思いをした試しがない。
「あの子・・・利希宇さんに手を出してるかもしれない」
「えっ」
信子の行動に辟易してはいたものの、友だちの恋人に手を出す女ではないと思っていた秀美は絶句する。
「確証はあるの?」
「利希宇さんのカフェにしょっちゅう出入りしてる若い女がいるらしいのよ。利希宇さんと毎回妙に親しげにしてるから変だって私のファンの男の子が密告してくれたわ。信子よきっと。あのセレブ大好き女が茶道の家元の坊ちゃんを放っておくわけない」
「でも・・・」
秀美はまだ信じられないでいる。
「友だちの恋人を奪うような女ではないと思うんだよね・・」
暗い顔で考え込んでいた明美は、意を決したように口を開く。
「・・・実は私、信子より前にHo-ichiさんと付き合ってたの」
「えっ」
秀美も康子もただただ驚くばかりだ。
「あいつ、いつも私が付き合う男を奪いたがるのよ。元彼だって、その前の彼だって信子に奪われたわ。いつもいつも・・・」
秀美と康子は明美の衝撃の告白にどうしていいか分からず、顔を見合わせた。
「私、今からあいつの家に火をつけてくる」
「ダメよ!」
「何言ってんの明美!早まっちゃダメ!」
正気を失った明美を、秀美と康子は必死で止めようとする。
「あんた、このままでいいの?利希宇さん、寝取られてるかもしれないんだよ!?」
髪を振り乱して訴える明美に、秀美は淡々と答える。
「本当のことは、利希宇と、信子から直接ききたいよ。どっちも私の大切な人だし、無闇に傷つけたくはないの」
「冷静なのね・・・いつも」
明美は口を歪ませている。
「・・・明美?」
「私はもう我慢できない・・・あいつにはもうウンザリよ・・・あいつは本能でしか行動できないメス豚なのよ!殺してやるんだから!放火してやるんだからーーーーー!!!」
「明美!待ちなさい!明美ーーー!」
秀美は走り行く明美を追いかけた。
康子はBARの椅子に腰掛けたまま、もう一度腕時計を確認する。
『23時・・・』
ゴールドの散りばめられた仰々し過ぎる腕時計の針は、いつも規則正しく時を示してくれる。
カフェ「RE:9(ri-kyu)」は夜になるとBARに変わる。
マスターの千野利希宇特製コーヒー&サンドイッチが、疲れた都会の人間の心を癒してくれると人気を呼び、今夜も店はお客でいっぱいだった。
「いらっしゃい」
低くて渋い声、優しいけれど意味深な微笑みで迎えてくれるマスターに惚れる女は少なくない。
「・・・ガールズ・トークは終った?」
「うん・・・なんだか疲れちゃった。あの人たちのテンションにはついていけないかも」
「ははは。そうだろうね、康子ちゃんは」
康子は利希宇に「コーヒーちょうだい」と言ったっきり頬杖をついて目を閉じた。
利気宇はいたわるようにコーヒーカップを康子の前にそっと置いた。
「・・・もうすぐ店閉めるから。もうちょっと待っててね」
利希宇と初めて会ったのは3ヶ月ほど前。秀美が「雰囲気の良いカフェがあるから」と言って連れて来てくれた。見つめ合う利希宇と秀美を見て、恋人同士なんだとすぐに分かった。しかし、自分の中にある利希宇への恋心を見つけるまでに、さほど時間はかからなかった。
康子は一人で何度も「RE:9」に足を運んだ。初めは自分の恋の相談(彼氏が勃たない等)に乗ってもらったり、家族のことを話したりなどあくまで「友だちの彼氏」という距離感を保っていたがすぐに歯止めが利かなくなった。驚いたのは、利希宇も自分にただならぬ想いを抱いていたということだ。二人は20も年が離れていたが、そんなのおかまいなしに激しく愛し合った。康子は利希宇の身体にもプレイにもメロメロになっていった。茶道の家元なだけあって茶せんや柄杓など、色んなアイテムで利気宇は康子の身体を攻めた。
しばらくして康子が目を開けると、客はもう帰ってしまっていた。店の外に「CLOSE」のプレートを出し終えて入ってきた利気宇はトロンとした顔の康子と目が合って笑う。
「ポンポン」と頭を軽く叩いたかと思うと急に利希宇が舌を絡めてきた。
「んっ」
コーヒーの匂いと共に利希宇の熱い舌を味わう康子。
店内にはもう、二人が漏らす吐息の音しか聞こえなかった。
MAY BE CONTINUED・・・・
※このお話はフィクションです。