「2014年3月31日・・・東アジアで二国同時に災いが起こる・・」
そう言い残し、祖母は他界した。
高名な占い師だった祖母の最期の予言を聞いたとき、父はまだ19歳であった。彼は災いを食い止めるべく単身日本に渡り、芸能界に「スパイ」として潜り込んだ。
↑我的爸爸。
父はその類まれな才能で日本の芸能界をあっという間に席巻した。誰も彼が台湾からのスパイなどと疑うはずもなかった。父の持ち芸の一つに「デタラメ中国語」がある。実際には堪能に話せる中国語を敢えて目茶苦茶に喋るネタは日本人に大受けした。
また父は、祖母がまだ元気だったときにこんな予言を聞かされていた。
「お前は男児と女児、二人の子どもを授かる。その二人が東アジアを救うメシアとなるであろう」
父が日本で「可以笑」という番組の司会を初めたその年、長男は生まれた。父はその男の子に、中国語で『帝王』という意味のある「龍(ロン)」という名前をつけ可愛がった。
約10年後、祖母の予言通り玉のような女の子が生まれた。父は「精神にゆとりのある女の子に育ってほしい」という願いを込め、その子に「暇(シァ)」という名前をつけ可愛がった。
私は父が日本で稼いだ莫大な財産のおかげで東京の私立大学にて悠々自適な生活を送っていた。
「閒空的女大學生試著做愚蠢事的博客(暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ)」を書き始めたのは、離れて暮らす父と兄に対して『無事に暮らしていますよ』というメッセージを伝える役目も果たしていた。
兄から伝言が届いたのは2月のことだ。
(「時は来た。お前は台湾に戻れ。俺は日本を守る」)
スパイとして東京を見張っていた兄にとって「無職」という肩書はとても都合の良いものだった。
私は急な台湾帰国が不自然にならないよう、周りの人たちには「卒業旅行に行ってくる」と嘘をつき、水面下で着々と準備を進めた。
日本の首相、安倍晋三(アンベイジンサン)が唱えた「大増税(ダーゾンシュイ)」のせいで日本国民の政府に対しての怒りは相当なものになっていた。
「もう政府にはウンザリだ。今こそ革命を起こそう・・・!」
各地で若者たちが集会を開き、テロを起こさんとしていた。
テロリストたちの頂点にいたのがこの男
余比。
「ヨッピー」という愛称で若者にカリスマ的人気を誇っているが、行動のあまりの奇抜さに何度か日本国警察に捕まったことがあり、政府への不満を募らせていた。
龍(ロン)はこのテロリストを鎮めるために3月31日の夜に下北沢で余比と落ち合うことにした。
本日です。笑っていいともの最終回とかぶってるけど、みんなイベントきてくれるかな? / ヨッピー×大川竜弥 「無職のサバイバル術」 ~無職が東京で暮らす方法~ | B&B http://t.co/7mlI1gOoy7 #bookandbeer
— 大川竜弥(フリー素材) (@ryumagazine) 2014, 3月 31
爸爸の一義は日本国の中心である新宿にて日本中のエネルギーを一箇所に集め、国民の意識を4月1日から始まる大増税(ダーゾンシュイ)から逸らそうとしていた。「可以笑(笑っていいとも)」という番組司会を33年も務め、国民的人気番組に育てたのも全て今日のこの日のためだった。
私は29日に台湾に現地入りし、機を伺っていた。狙いは台湾のホワイトハウス、総統府(ゾントンフー)。台湾政府が中国と結んだ貿易協定があまりに不公平なものだったため、怒り狂った台湾の若者たちによって占拠されていたのだ。
もしも予言通りに日本と台湾の若者たちが同時に革命を起こそうものなら地球上のエネルギーが東アジアに一挙に傾き、その影響でロシアにある化学兵器のスイッチがなぜか自動的に稼働し、地球が爆発してしまう。
私、暇(シァ)と兄の龍(ロン)、そして爸爸(お父さん)の一義(タモリ)が背負う命はあまりにも多かった。しかし愛する地球を守るために我々一族は立ち上がる。それが運命だからだ。
31日の夜、わたしは総統府へ行き、若者たちに向かってこう叫んだ。
「我的名字空闲的女大学生(私の名前は暇な女子大生)。
现在马上不进行作为笨蛋(今すぐ馬鹿なことはお止めなさい)。」
台湾若人A「窝囊废的日本人学生明白我们的什么?」
(腑抜けの日本人学生なんかに俺たちの何が分かる?)
台湾若人B「不想听用父母的钱玩,正不灵的日本人学生说的」
(親の金で遊び呆けているだけの日本人学生の言うことなんか聞かないね)
暇「在我的身体里,台湾人的血正流动」
(私の体の中には台湾人の血が流れている)
「也知道你们的心情」
(あなたたちの気持ち、分かります)
「日本的大学生确实愚蠢」
(日本の大学生、確かに馬鹿)
「不过舒适地教育全体伸展,有那个」
(でもそれは全部ゆとり教育のせいよ)
暇「能否请你不要一起使东亚的未来热闹起来吗?(東アジアの未来を一緒に盛り上げてくれるかな?)」
台湾若人A「这个女人正说什么?(この女は何を言ってるんだ?)」
台湾若人B「的气正不正常的・・・(気が狂ってやがる・・・)」
「可以笑(笑っていいとも!)グランドフィナーレ」は瞬間最高視聴率33.4%にも上り、一義(タモリ)は日本国民の心を癒し、なだめた。
龍(ロン)は余比(ヨッピー)に対して得意の交渉術でテロを止めさせた。
暇(シァ)は上手く台湾若人の注意を惹き付け、攪乱した。
3人の奮闘のおかげで東アジア、そして地球の平和は守られたのであった。
一義「全体是谎话,能否请你不要笑着饶恕吗?」
(全部嘘だけど笑って許してくれるかな?)
「好(いいとも)!」
もちろんフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません。