こんばんは。暇な女子大生です。
10月26日深夜のJUNKサタデー「エレ片のコント太郎」で水道橋博士が風俗の話を延々としていました。「九州女はものが違う」「伊万里焼きのような新品の器もいつかは衰えていくんだから・・・」などと女を物のように言う氏の話し方にちょっと憤りを感じました。今回はもしも日本社会での女性と男性の地位を反転させたらどういう社会になっているんだろう?という疑問からこんなショートストーリーを書いてみました。
時々性別を反転させながら読んでみて下さい。
~OB(オフィスボーイ)太郎の憂鬱な一日~
「はぁ~・・・」
朝からため息がこぼれる。太郎は洗面台の鏡に映った自分の陰鬱な顔を覗き込んだ。
『仕事に行きたくない・・・』
就職氷河期、さらに男性の就職は難しいと言われている昨今。太郎は頑張ってレベルの高い大学に入学できたにも関わらず一般職にしか就けなかった。就活の面接では「男性はあんまり採りたくないんだよねえ、正直・・・。うちも利益出さないといけないから、仕事の出来ない男の子はいらないんだ~」というニュアンスのことを数社から言われた。
「所詮日本は女社会だからな・・・」
この日本に生きている限り、男には我慢しなければならないことが沢山ある。上司(女)からのセクハラ、女性社員との折衝。また、男は女より稼ぎが少ないのでこの先一人では生きていけない。婚活をして結婚相手を見つけ、女に養ってもらわなければ・・・でも仕事の忙しさに追われているしそんな暇はどこにもない。
モタモタしている時間はないと、靴を履いて玄関を出る。駅に着くと大勢のサラリーウーマンたちがパリッとしたスーツで列を成していた。まるで「日本経済は女たちで回しているのだ」と一丸となってアピールしているように見える。男たちは遊びに行くときとほとんど変わらないカジュアルな格好で通勤している。結局会社が男に求めているものというのは仕事で売り上げに貢献するということよりオフィスに華を添えるということだけなのだろう。
女性駅員にぐいぐいと身体を押され電車内に詰め込まれる。周りには多くの女性乗客たち。太郎は嫌な予感がした。
電車が走り出して暫くすると、臀部に柔らかい感触があった。誰かが太郎の尻を触っている。
『まただ・・・』
太郎は目を瞑り、この時間が早く過ぎることだけを祈った。もし声を出したとしても誰も助けてくれない。駅員も警察も女ばかりだから奴らに「尻を触られた」なんて報告するのは恥かしいし、重要なこととして取り扱ってもくれない。心の中であれこれ考えているうちに尻を触る手が二本に増えた。太郎は絶望に襲われた。女のうち1人は尻をまさぐっているし、もう1人は股●に手を回してきた。近くに立っていた女性に目で『助けてください』と合図を送ったが鼻で笑われ、目を逸らされた。
やっと目的地に着き、大量のサラリーウーマンと共に車外に吐き出される。やっと解放された・・・太郎がホッとした瞬間、「いいケツだな」と後ろから囁かれた。きっとさっきまで自分の尻を触っていた女だろう。太郎はひどい屈辱を感じ、怒りに震えた。しかし会社に遅刻すればもっと恐ろしいことになる。重い足を動かしオフィスへと向かう。
「馬鹿野郎、何時だと思ってんだ。始業5分前に出社する奴があるか」
女上司は今日も太郎を厳しく叱る。社員の大半が女である太郎の職場では太郎たち男性の肩身は狭い。近くでメールチェックをしていた女が太郎のことを見て馬鹿にしたように笑った。
「すみません、課長。朝、電車の中で痴女に遭いまして・・・」
「はあ?痴女?何言ってんだオマエ。オマエくらいの器量でケツ触ってもらったことを嬉しく思わなきゃダメだよ。さあ、私にも触らせなさいよ」
課長は冗談交じりに太郎の尻をポンポンと叩いた。
「やめてください!」
大声で叫んだ。女性社員たちの視線が突き刺さる。
「歯向かうのかい?仕事も出来ない男のくせに。生意気だぞ!ほら、早く制服に着替えてこいよ」
太郎は悔し涙を抑えながらロッカールームに向かった。薄暗い部屋に太郎のようなオフィスボーイ用の制服が何着か掛かっている。太郎はこのダサい制服がちっとも気に入っていなかったが仕事なので仕方が無い。
やっとデスクについた。女性社員たちとは隔離された場所にある太郎たちのエリアはすぐ給湯室に行けるようドアのすぐ側にあり、少し寒い。社員たちが何度もコーヒーを頼むので立ったり座ったりと忙しいのだ。その合間にコピー取りや簡単な雑務をこなす。
女性社員たちは営業に企画開発に・・・と大変だがやりがいのある仕事をさせてもらっている。転勤は多いが、どんどん昇進しているし、給与は太郎たちと雲泥の差である。
悔しいが、今の日本社会では仕方が無い。「男性の地位向上」を政治家は謳っているが本当に実践している会社はごくわずかだ。マニフェストを出している首相も、議会の連中も全員女なのだから本当に男性の地位向上を望んでいるのか全く信用出来ない。
給湯室で同じOBの拓也と会って話し込んだ。
「今月の給料ヤバイよ・・・早く誰かと結婚しなきゃ・・・」
「広報課の真理さんなんかどう?あの人自由が丘にマンション買ってるって話だよ」
「ホントに!?いいよなあ女は・・・いざとなれば1人でも生きていけるんだもんなあ」
17時になると太郎の仕事は終わりだ。忙しく働く女たちとは違い、太郎の仕事は急ぎではないものばかりなので定時で帰れる。今日も周りにバレないようにそっと帰り支度をし、椅子から立ち上がった。
「いいよなあ、男は。ロクな仕事もしてねえくせに定時で帰れるんだもんなあ!」
予想通り女性社員たちの野次を受ける。申し訳ない気持ちでオフィスを後にした。
今日は18時に高校時代の友人、雄太と待ち合わせしている。
雄太は今、風俗で働いている。「高卒の男なんて社会で必要とされてないし、まともな生活が出来るわけない。いっそ風俗で働いたほうがマシ」と開き直る雄太の話を聞くといつも少し勇気が出る。
「最近上客の麻美さんに貢いでもらってるんだ。もしかしたら一緒に住むことになるかも」
「そう・・・」
太郎は複雑な気持ちになった。雄太の生活はどんどん良くなっているように見える。羨ましいとも思うし、同時に「女性に金で飼われている」友人を軽蔑しもした。
しかし久しぶりに遭う旧友との話に花が咲き、怒涛の勢いで太郎は日頃の愚痴を雄太に話した。上司のこと、同僚のこと、電車に乗っている時の嫌な出来事、社会全体に対しての不満・・・
「オマエも大変なんだな・・・」
雄太は風俗男に特有の明るさで太郎を励ました。二人は大いに盛り上がった。酒を何杯も頼み、タバコを吸い、大声で笑って泣いた。
その時だった。高そうなダークスーツの女がツカツカと歩いてきて、太郎たちの足元に唾を吐いた。あまりのことに太郎と雄太は息を呑み、その表情は凍りついた。
「てめーらうるせーんだよ!男のくせに大声でぎゃーぎゃ騒ぎやがって。目障りなんだよ。男なんだからタバコなんか吸ってんじゃねーよ。てめーら男はなあ、女に跪いて大人しくしてりゃーそれでいいんだよ」
その声を聞いて店にいた女たちはそうだそうだと賛同を見せた。呆然とする太郎の腕を掴み、雄太は店の外へ飛び出した。
気がつくと太郎の視界が滲んでいた。知らぬ間に涙が溢れ出していたのだ。雄太も歯を食いしばり、涙を我慢している。
「俺も・・・俺だって悔しいんだ。こんな仕事しか出来ないってことが。女に媚びることでしか世の中で成功出来ないってことがね。でも他に方法が分からない・・・男には未来が無いんだよ。だって、この国を動かしているのは全員女なんだから。奴ら自分の都合の良いように法律でも何でも作るのさ」
太郎はまだまだ動揺していたが、夜も大分更けたし早目に家に帰らなければならないため渋々雄太と別れた。
アパートの一室に辿り着き、慌ててビニール袋の中の食材を冷蔵庫へと入れる。
「遅かったじゃねーか」
交際中の麗子は残業が多いためいつも夕食は太郎が作ることになっていた。
「ごめん。すぐ作るから・・・」
「ったくどこ行ってたんだよ?まさかまたあの馬鹿な風俗男と会ってたのか?」
太郎はこの失礼な女との交際を止めたいと思ってはいたが、家賃の7割を麗子に負担してもらっているため、別れると経済的に辛くなる。それに結婚の相手にも目処が立たない今はこの女と一緒にいた方が得策、と思いグダグダと付き合い続けていた。
感情を殺してこの女のために包丁で食材を切っていると、麗子が太郎の股●をまさぐってきた。
「会社でストレス溜まってるから、早く相手してくれよ」
麗子のあまりに乱暴な態度に太郎はブチ切れた。
「いい加減にしろ!なんなんだよ、女だからって威張るんじゃねーよ!単に女であることの何がそんなに偉いんだよ、このクサレ女、オマエなんか・・・女なんか皆死んじまえ!」
麗子は太郎の頬を思い切り殴り床に叩き付けた。
「なんだその口の利き方は!風俗男の影響か?二三日オマエを家に閉じ込めておいた方がいいな。男なんだから言葉遣いには気をつけろよ。そんな野蛮な口利いてたらなあ、誰も結婚してくれねーぞ。どうせお前ら男なんて女がいなけりゃ生きていけないんだ。分かったらとっとと服脱げよ!男なんてなあ、家事と女のセッ●スの相手するくらいしか価値がねえんだから」
太郎は返す言葉もなく床に寝転び、絶望を感じていた。麗子にされるがまま服を脱がされる。真っ暗な未来を思い、静かに目を閉じた。