暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ ※「さだきよ ザ・ワールド」へ移転しました

暇を持て余した女の人が欲望の赴くままにしたためています。

「表参道で髪を切っている」

と言うとあなたは「生意気だ」「しゃらくせぇ」「1000円カットでも行ってろ」と言うだろう。私もそう思う。

『髪なんて適当に短く、量が少なくなればそれでいい・・・』

少し前まで家から自転車で10分のところにあるお手軽美容室(カット代3600円)に通っていた。

それでも値段が高いと思っていた。

 

CAになった美人の友達はこう言う。「表参道は美容室の激戦区だから技術がすごいの。貴女も最先端のところで切ってもらわなきゃ駄目よ」

美人は表参道の美容室でカットしてもらえばいいと思う。お似合いだし。

 

私は自分の「美しさ」という点に諦めの気持ちを持っていた。高いお金をかけて最高の技術を施してもらう必要はないと思った。

 

 

 

「お姉さん、髪の毛痛んでるね?」

突然目の前にアイドルのような目の覚める美青年が現れた。

歩き回って心身共に疲れきっていた私は思わず立ち止まった。長く伸びた髪の毛は結んだり解いたりの繰り返しで毛先がボロボロだった。

就職活動のため、たまたま通りかかった表参道には、いつも新しい顧客を作るための客引き美容師見習いが立っているのだった。

 

「いつもはカット代結構とるんだけど、今だけ格安で切ってあげるよ」

『・・・一回くらい激戦区の腕前を見せてもらうのも悪くないかな』

 

私はアイドル兄さんについていくことにした。

後で知人にこの話をすると「それナンパの常套句じゃん、ついていっちゃ駄目じゃん!」と言われたが、私はこのとき精神的にもぐずぐずで、「もうどうにでもなれヒャッハー\(^o^)/」というノリだったし、「そもそも自分がナンパされるわけない」と思ってたのでとにかく兄さんの後を追っかけた。

 

「就職活動やってるんだ~?大変だね。俺も美容師目指して頑張ってるよ」

「あと何年かしたら美容師になれるの?」

「う~ん、年数とかの問題じゃないんだよね・・」

美容師の世界はいろいろ大変みたいだ。表参道の美容師なら尚更きついだろう。私の地元の同級生(♂)も美容師見習いとして働いていたが、数年で辞めてしまった。 

 

着いた先はエキセントリックな建築で有名らしいおしゃれサロンだった。

「おしゃれですね・・・有名な人も来るんじゃないですか?」

「うん・・・来るかな~・・・・」

「えっ!?どんな人??」

「う~んとね、近藤マッチさんとか、アンジャッシュの児嶋さん。」

「・・・・へ、へーーーー!!へー! す、すごいですね!」

「あ、あとね、AKBのマネージャーさんとか、ジャニーズのマネージャーさんも来るよ」

「・・・お、おおおおーー!!!」

 

中に案内される(ドキドキ)

「こんにちはー!」

限りなくナオトインティライミに近い男が私の目の前に名刺を出している。

「キング山本(仮名)です。よろしくー!」

満面の笑みを浮かべるキング。自分の名前にキングの冠を被せちゃう人が日本にもいたなんて。

 

「今日は僕がキミを一生懸命可愛くしてあげるからねっ!!」

明るい。自分の周りにはいなかったタイプだ。私の明るさが行灯だとするとキングは白熱球の一番ワット数が高いやつだ。

 

「どんな髪型にしよっかー?^^クール系?ギャル系?可愛い系?」

「真っ当なOL風でお願いします」

私はこのとき、可も無く不可も無い、出版社に勤めてる年収400万くらいの地味なOLのような髪型にしてほしかった。

「あ、わかった。AneCanみたいな感じだね!?」

AneCan!?うん、そう、AneCanみたいな感じでお願いします!」

キングにとって真っ当なOLとは、押切もえのイメージだったらしい。

 

数十分後私は、押切もえにはなれなかったがOLの一番下っ端くらいにはなった。

「前髪伸びちゃったら無料で切ったげるからまたおいで☆」

 

キングは明るく言い放ち、悪くない気分でその日は家に帰った。

 

二ヶ月が経った。

 

私の前髪が目を完全に覆い隠していた。表参道に行く機会がなかったのだ。何しろ家から遠すぎる。

自分で切るのも勿体無い気がして伸びに伸びていた。気持ち悪い前髪のまま面接も受けてしまった。

 

チャンスは今日訪れた。

午後4時。六本木で、いけすかないタイプの広告代理店の説明会から逃げ出した。

「社員全員仲良しです☆」みたいな、居酒屋バイトの求人に載ってる写真のような気持ち悪さがあった。

 

雨でずぶ濡れになっていたし、うっとうしい前髪としゃらくさい会社のせいでストレス100になっていた。私は助けを求めるようにキングの元へ電話をかけていた。

 

「よっ☆こんにちは。雨大丈夫だった?^^」

私の前髪を高速で切り落としていく。

 

「明日はね、台風が来るらしいよ・・・」

「やだな~。・・・台風の日なんて、お客さん来るんですか?」

「ん~キャンセルしてる人、いっぱいいる」

鏡の中の、キングの姿を見てみる。いま彼が切っている私の前髪は、前回のアフターサービスだから何のお金にもならない。今日でさえ、お客さんはぽつぽつしかいない。明日は多分、お客さん全く来ないんじゃないかな・・・

 

私はやっと、クリアな視界を手に入れた。

「どう?ストレスフリーになった?^^」

 

「今日は来てくれてありがとねっ。また伸びてきたら、すぐ来るんだよ☆」

一円にもならなかった私を見送るキング。

 

しばらく歩いて振り返るとまだ手を振っていた。

 

これからも彼らは歩道に立って、必死にお客さんを呼んだり、見習いさんは美容師さんから叱られながら厳しい練習を重ねて、他店と競争し合ってやっていくのだろう。

そう思うと途方に暮れた。

 

 

帰り道、表参道駅を降りていくお洒落な人々を横目に見ながら私は、働くという言葉の意味の重さをひしと感じていた。

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